私が「雲のむこう、約束の場所」をはじめて知ったのは大学一年の春でした。
その日私は他大学に進学した友人の部屋に遊びに行っており、最近のアニメについて語り合っていたのですが、その折、友人から「このアニメは青森が出て来るんだぞ」と紹介されたのが「雲のむこう、約束の場所」だったのです。
津軽海峡を境に日本が分断されているというだけで興味をそそられましたが「これは感動するぞ」という友人の言葉に、この作品に対する期待は最高潮になっていました。
ところが、友人の部屋というテンションがいつもとは異なった場所からでると「雲のむこう、約束の場所」のことはすっかり忘れてしまいました。アニメが好きといっても大学生でしたから、わざわざ新しいアニメを発掘しようとも思わなかったのかもしれません。
心のどこかに「雲のむこう、約束の場所」が引っかかってはいたのですが、それからまるまる二年の間は結局見ることはありませんでした。
そして運命の時がやってきます。
大学三年の春。新学期に向けての準備が一通り整い、これといってやることがなくなってしまったときに、ふと「雲のむこう、約束の場所」を思い出したのです。
そして早速ツタヤに赴いて、DVDを借りてきました。
そのまま普通にDVDを見てもよかったのですが、私は少々思案することにしたのです。
「このまま普通に見てもいいが、時間はたっぷりあるのだからいつもと違った方法で見ることにしよう」
言うほど特殊な環境を作ったわけではないのですが、私は部屋の電気を消し、一切の明かりが入らない環境を作った上で、画面に近づいて鑑賞することにしたのです。
「アニメを見時には明るい部屋で」とか「画面から十分離れて」という最近よく目にする標語をまったく無視したわけです。
なんとも不健康な鑑賞方法ですが、結果として非常によいものでした。
私は長らくアニメの魅力を忘れていましたが、やっと思い出すことができたのです。
かつて、アニメとはひとつの桃源郷だった。
アニメを写す出す液晶の画面意外に何も見えない暗闇の中で、私はアニメの世界に浸っていました。なんともいえないあの居心地のよさを今度こそ忘れることはないと思います。
そしてこのことは、私が作った鑑賞環境によるものだけではなく、「雲のむこう、約束の場所」が提供してくれた世界観、音楽、ストーリー、があればこそのものだったことは言うまでもありません。
中学、高校という青春の一ページがそのときすでに私にとって郷愁を誘う過去のものになってしまったことも原因のひとつといえるかもしれません、
もしあなたがアニメのもたらす桃源郷を忘れてしまったとしたら、私のようにこの作品で思い出すことができるはずです。
ただし・・・ある程度の年齢になってから経験する桃源郷は非常に危険なものです。下手すると帰ってくることができません。私自身危うく引きこもってしまいそうになりました。くれぐれも現実世界に自分が生きていることを忘れないようにしてください。
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